気管支喘息
気管支喘息とは、気道の慢性持続性のアレルギー性炎症で、いったん発症すると、簡単に完治するものではなく、症状が改善するまで、大概何年も要する場合が多いです。
発症後は、いかに喘息発作を誘発させないか、コントロール良好な状態を維持するかが、最重要ポイントになります。すなわち、喘息発作の予防管理が大切になります。
気管支喘息の予防は、まず該当する抗原から回避することですが、実際には、ダニ、ハウスダストの例の様に、たいてい回避は不可能で、予防の薬が補助的に必要となる場合が多いです。予防薬は健康な状態を維持、コントロールするために必要な薬で、確かに元気な時に薬を飲んだり、吸入をしたりする事に抵抗感はあるかとは思いますが、内服・吸入を継続(通常は最低1年)する事によって、発作は予防されるという観念を持ってもらうことが大事です。
気管支喘息を誘発する危険因子と抗原
気管支喘息を誘発する危険因子として、最も重要な因子はアトピー素因で、遺伝的要因が強く、両親のアレルギー疾患の有無が参考となります。
その他に、ダニ、ハウスダストに代表される吸入抗原、食物抗原(即時型反応が多い)、喫煙、大気汚染、感染(特に呼吸器感染)、運動、気象変化(温度変化の差が大きい春や秋)、心理的要因(ストレス)等があげられます。
気管支喘息を引き起こす抗原(アレルゲン)を明確にするために、小児科では、血液検査によるアレルギー検査を行います。その主な検査がIgE抗体の検査で、非特異的IgE(RIST)及び特異的IgE(RAST)を調べます。小児の気管支喘息患者の約90%が、ダニ、ハウスダストの抗原特異的IgE値が陽性です。また、白血球中の好酸球数上昇も、アレルギー素因を示唆する参考所見となります。
治療法
気管支喘息発作時の治療は、気道炎症を抑制する消炎剤と気管支拡張剤が中心となります。
まず、交感神経刺激剤の吸入・内服・貼付やテオフィリン製剤の内服等の気管支拡張剤を使用し、無効な場合は消炎剤の点滴を使います。消炎剤の代表はステロイド剤で、点滴等で使用するステロイド剤は、代謝の早い副作用の少ない薬を投与します。
予防薬
最も強力な予防薬は吸入ステロイドで、成人の場合と同様、小学生以下の小児では第一選択になっています。また、5歳以下の吸入ステロイドとして、平成18年9月に発売されたブデソニド懸濁液(パルミコート)が使用可能となり、乳幼児の吸入がより便利に、より確実に行えます。
吸入ステロイド以外の予防薬には、抗アレルギー剤、テオフィリン製剤等の内服薬、交感神経β2刺激貼付剤(ホクナリンテ?プ)、インタール(+ β2刺激薬)吸入、最近発売された長時間作働性β2刺激吸入薬(セレベント)等があり、最初は、予防薬1種類から開始することもありますが、通常は2〜3種類を組み合わせて開始します。
どの予防薬が適しているかは、患者さんによって多少異なりますが、小児の場合は成人と違って、症状の程度が同レベルなら、同じ組み合わせの処方で大概コントロール出来ます。
気管支喘息発作の予防として、常日頃から、予防薬以外の予防対策も必要です。ダニ及びカビ対策としての清掃及び換気保持、ダニ対策としての布団干し、及びじゅうたん、カーペット、ソファの回避等は、重要な事です。
気管支喘息に対する治療は、今や発作の治療より予防管理が主流となってきています。
小児の気管支喘息の約70〜80%は、思春期頃までには自然寛解すると言われています。コントロール良好な患者さんは寛解する確率は高いですが、逆にコントロール不良の患者さんは、成人まで移行する確率が高くなります。
何かお聞きになりたい事、御心配な点がある方は、アレルギー外来を受診して、御相談下さい。
咳喘息
気管支喘息と異なり、喘鳴を伴わない咳だけの発作が、特に夜間に集中し持続する咳喘息という疾患があります。
治療に関しては、気管支喘息と同様ですが、テオフィリン製剤等の気管支拡張剤が不要な場合が多く、咳喘息も重症な場合は、吸入ステロイドが必要になることもあります。
気管支喘息と同様、咳喘息も発作を予防することが重要で、予防を怠れば、将来的に気管支喘息に移行する場合があるので注意が必要です。